
地震により倒壊したタイの首都バンコクのビル=29日(ゲッティ=共同)
◆―― 軍政、異例の支援要請 タイ、ビル倒壊で犠牲者
【ヤンゴン共同】ミャンマー中部を震源とするマグニチュード(M)7・7の大地震について、軍事政権を率いるミンアウンフライン総司令官は28日夜、首都ネピドーや震源に近い中部マンダレーなど各地で計144人が死亡、約730人が負傷したと発表した。被害がさらに広がるとの見通しを示し、国際支援を歓迎すると表明した。隣国タイでも強い揺れを観測し、首都バンコクでは建設中のビル倒壊などで8人が死亡、80人以上が行方不明になった。
現地からの情報によると、人口密集地のマンダレーなどでは建物の倒壊が深刻。2021年2月のクーデターで国際的孤立を深めた軍政は独力での危機打開が困難と判断し、異例の支援要請に踏み切ったとみられる。総司令官は早ければ29日にも、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドからの支援物資が到着すると述べた。
米地質調査所(USGS)はネピドーよりもマンダレー周辺と北部ザガイン地域の被害が深刻だと分析し、死者が千人規模に達する恐れもあるとの推定値を示している。
ミャンマーの死者数はネピドーが96人、マンダレー周辺が30人、ザガイン地域が18人。
バンコクでは29日、ビル倒壊現場で、がれきの下に埋まったとみられる作業員らの捜索活動が続いた。タイ政府によると、作業員ら7人が死亡した。別の建設現場でも1人が死亡した。
タイとミャンマーの日本大使館によると、両国で日本人の被害は確認されていない。
ミャンマー軍政は経済制裁を科す米欧と対立し、周辺国で構成するASEANとも対話が難航。最近は中国とロシアへの接近を強めている。
◆―― 「必ず助かる」信じて待つ バンコクのビル倒壊現場
【バンコク共同】強烈な揺れの直後に倒壊した建設中の高層ビルは巨大ながれきの山となっていた。タイの首都バンコク中心部。ミャンマー中部を震源とする地震発生から一夜明けた29日、ビル建設に従事していた家族や同僚を捜す人たちは疲れ切った表情で倒壊現場を見つめ「必ず助かる」と言葉を絞り出した。
現場には重機が入り、がれきを少しずつ取り除いていた。同日午前、救助隊や警察による手作業での本格的な捜索が再開。現場の指揮官は「死者数は増えるだろう」と語った。
母アムホーンさん(61)と妹ニパさん(29)が行方不明となったジャンペンさん(39)は「地震発生後、母はビルの階段を下りて2階部分までたどり着いていた。でも、そこで倒壊に巻き込まれた」と話した。
「妹は先にビル外に脱出していたのに母が心配で助けに戻った。その後、行方が分からない」という。
夜通し捜索活動を見守りながら、何度も2人の携帯に電話をかけた。呼び出し音はするが、応答はない。ジャンペンさんは携帯を握り締めて「大丈夫。助かると信じている」と語った。
ティラポーンさん(33)は、出稼ぎで建設作業員をしていた父ヌンカイさん(63)の救助を待っていた。「父は23階部分にいた。無事に帰ってきてほしい。バンコクでこんな強い地震があるとは考えたこともなかった」と話した。
◆―― 近隣や首都でM7続発も
遠田晋次東北大教授(地震地質学)の話 震源となったザガイン断層は南北に千キロほど延びる世界有数の大きさで活動性も高く、そのうち中央部の200キロほどが動いたようだ。1839年にも大きな地震が起きており、その後の約200年間に蓄積されていたひずみを、今回の地震で解放したとみられる。まだ断層の「ずれ残り」があると思われ、近隣の地域や、首都ネピドー方面などで、今後もマグニチュード(M)7を超える規模の地震が起きる可能性がある。