発酵中のもろみを混ぜる蔵元の男性=10月22日、兵庫県明石市
◆―― 日本酒や焼酎、輸出に期待 23件目、12月正式決定へ
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、日本酒や本格焼酎などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。文化庁が5日、発表した。12月2~7日にパラグアイ・アスンシオンで開かれるユネスコ政府間委員会で正式決定される見通し。登録されれば国内23件目となる。伝統的な酒造りは国内各地に広がっており、輸出拡大や地域活性化への期待が高まりそうだ。
伝統的酒造りは、カビの一種であるこうじ菌を使い、コメなどの原料を発酵させる日本古来の技術。複数の発酵を同じ容器の中で同時に進める世界でも珍しい製法で、各地の風土や気候の知識などとも結びつけながら、杜氏や蔵人らが手作業によって築き上げてきた。
代々受け継がれた技術で造られる酒には、日本酒や本格焼酎、泡盛のほか、もち米と焼酎を使って甘みを引き出す本みりん、もろみに木灰を加えて保存性を高めた灰持酒(あくもちざけ)などがある。
勧告は、伝統的酒造りの知識と技術が「個人、地域、国の三つのレベルで伝承されている」と評価。祭事や婚礼など、日本の社会文化的行事に酒は不可欠であり、地域の結束にも貢献しているとした。
阿部俊子文部科学相は5日の記者会見で「伝統的酒造りは杜氏、蔵人などが築き上げてきたわが国の大切な文化だ。今回の勧告は大変喜ばしい」と述べ、正式登録に向けて「引き続き最善を尽くしたい」と意気込んだ。
政府は2021年、伝統的酒造りを国内の登録無形文化財に選定。文化審議会の答申を経て22年にユネスコに申請した。
国内の無形文化遺産は「和食」や、22年に登録された豊作祈願や厄払いの踊り「風流踊(ふりゅうおどり)」など22件ある。政府が伝統的酒造りに次いで登録を目指す「書道」は、26年秋ごろ審査される見通し。
【無形文化遺産】2006年発効の無形文化遺産保護条約に基づき、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が登録する無形の文化。伝統芸能や工芸技術、祭礼行事など多岐にわたる。183の締約国から選ばれた24カ国で構成する政府間委員会が毎年1回、60件程度を上限に審査。評価機関の勧告を踏まえて登録の可否を決める。登録がない国の審査を優先しており、日本など登録数の多い国は実質2年に1回の審査となっている。