防衛省の通信衛星「きらめき3号」を載せ打ち上げられるH3ロケット4号機=4日午後3時48分、鹿児島県の種子島宇宙センター
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日午後3時48分、国産新型ロケット「H3」4号機を鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げた。搭載した防衛省のXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を高度約3万6千キロの静止軌道に届けるため、予定の軌道で分離した。H3は1号機が打ち上げに失敗したが、2号機から3回連続の成功。
予定の軌道は、静止軌道への移動ルートになる静止トランスファー軌道(GTO)で、H3での衛星投入は初。きらめき3号は分離後、自身の燃料で静止軌道まで飛行する。これまでは多くの地球観測衛星が周回する高度が低い低軌道に投入してきた。静止軌道上の衛星は地球の自転と同じ速度で移動し、地上の同じ場所を観測できる。
きらめき3号は、気象の影響を受けにくいXバンドという周波数帯を使い、自衛隊の部隊間で横断的な通信を可能にする。運用中の1、2号と合わせ、3機体制が整う。2024年度内に運用を開始する見通し。
H3は2段式の使い捨て液体燃料ロケット。50号機で引退するH2Aの後継として、JAXAと三菱重工業が開発した。1、2号機は試験機の位置付けで、実用段階に入った3号機で初めて大型衛星を打ち上げている。
4日夜に記者会見したJAXAの担当者はH3の連続成功について「安定した運用段階に持ってこられた。非常に大きな一歩だ」と強調。三菱重工の担当者は「開発はまだ残っているが、これからも成功を積み重ねていく」と話した。
4号機の打ち上げは当初10月20日の予定だったが、天候の影響などで4回延期していた。
【静止軌道】地球を周回する人工衛星の通り道の一つで、赤道上空の高度約3万6千キロに位置する円軌道。衛星が地球を1周する時間は地球の自転と同じ24時間で、地上から見上げると常に同じ位置で静止しているように見える。地上の同じ場所を観測する目的の気象衛星や放送衛星(BS)、通信衛星に利用される。高度が高いため、観測画像の解像度は粗く、通信の遅れも大きくなるが、カバーできる範囲が広いのが特徴。一方で地球観測衛星の多くは高度約400~千キロの地表に近い位置を飛ぶ。