PFASを巡る血液検査の結果について記者会見する、岡山県吉備中央町の山本雅則町長=28日午前、同町役場
発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を巡り、一部浄水場から高濃度のPFASが検出された岡山県吉備中央町は28日、住民らを対象に公費で実施した血液検査の結果を公表した。PFASの一種PFOAが、最も高い人で1ミリリットル当たり718・8ナノグラム(ナノは10億分の1)が検出され、山本雅則町長は「米国のガイドラインで示されている1ミリリットル当たり20ナノグラムからすれば、高い数値」と述べた。
環境省によると、公費での検査実施は全国初。解析を担当する頼藤貴志・岡山大教授は「一般集団の方と比べて高いという結果だった」とのコメントを出した。
国は血中濃度の基準について、知見が不十分だとして値を定めていない。米国の学術機関は、7種類のPFASの合計が血液中で1ミリリットル当たり20ナノグラムを超えると、健康影響のリスクが増すとの見解を示している。町担当者は「(国内に)参考にできるものがないため、米国の基準と比較している」とした。
検査ではPFOAを含む7種類を分析し、PFOAの平均値は1ミリリットル当たり135・6ナノグラムだった。20ナノグラム以上検出された住民は、2歳以上で8割を超えた。
分析したのは昨年11~12月に検査を受けた住民らのデータで、2~12歳の65人、13歳以上の644人の計709人分。
町は現在、当初の日程で受けられなかったり、新たに希望したりした2歳以上を対象に、2月にかけて追加検査を実施している。
水質や血液検査を巡り、山本町長は「国が指針を打ち出してほしい。健康面のフォローや土壌汚染は規模が大きく、一自治体だけではどうしようもない」と訴えた。
吉備中央町では浄水場の水から、国の暫定目標値の28倍に当たるPFASを検出していたことが2023年に発覚。町は水源の切り替えや定期的な水質検査を実施しており、現在は検出されていない。
事態を受け、住民有志が独自で血液検査を実施したところ、2~80歳の男女計27人全員からPFASを検出した。検査に携わった小泉昭夫京都大名誉教授は「非常に高い値」と指摘、住民側が町に改めて検査を要望していた。
【PFAS】有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称。水や油をはじくなどの特性から幅広い製品に使われてきた。分解されにくく、人や動物の体内にも蓄積されうる。発がん性や免疫系への影響が報告されているが、身体への影響について国は確定的な知見はないとしている。国内では現在、PFASのうちの一部の製造や輸入は原則禁止。岡山県吉備中央町は一部浄水場で高濃度の値を検出、一時は水道水を飲まないよう呼びかけた。