サークル都市室蘭を構成する白鳥大橋はまちのシンボルとなっている=2005年撮影
産業経済再構築に尽力/白鳥大橋イベント展開
創立60周年を終えて21世紀に向けて新たなスタートを切った室蘭商工会議所。1985年の議員総会で3期9年会頭を務めた藤田健一氏(室蘭信用金庫理事長)が退任。新会頭には、70年から1期務めた栗林商会の栗林徳光社長が選任された。
「室蘭の産業経済はあらゆる業種で転機を迎えている。時代の流れは急速に進行しつつある。これらの芽を地場産業活性化の要素として、新しい産業経済の再構築と創造に努力したい」
就任時に決意を示した栗林氏の言葉にあるように、長期不況と構造不況からの脱却が喫緊の課題だった。室蘭テクノセンターの財団法人設立認可(85年)や道央道登別室蘭インターチェンジの供用開始(86年)といった明るい話題の一方、87年には新日鉄室蘭製鉄所の高炉休止を含めた中期総合計画が発表されると、要望活動に加えて署名運動や市民総決起大会に参加して、後の存続につなげた。
実質経済成長率が年平均5・7%となるなど内需主導型の本格的な景気拡大の年となった88年は、誘致活動が実り9社が室蘭に進出・操業開始、2社が進出表明とかつてないラッシュとなった。操業9社の雇用は約330人で、従来室蘭にはなかった企業が多くあり、新たな経済波及効果が期待された。
94年、30年余り役員を務めた栗林氏は退任。新会頭に新和産業の岩倉博社長が選任された。同年は三菱製鋼室蘭特殊鋼がフル稼働、室蘭港フェリーターミナルビルの完成などが室蘭経済の主な話題として挙げられる。
在任中には、サークル都市室蘭を構成する白鳥大橋の完成を見た。
80年12月末に着工が決定すると、室蘭経済立て直しの糸口となる雇用拡大をはじめ、鉄鋼材やセメントなどの需要増加、地元企業の有効活用を目指して関係機関に要望。商議所内でも地元企業有効活用特別委員会が設置されるなど、室蘭はもとより道内経済の起爆剤としての期待が高まった。
85年9月に始まった工事は順調に進み、98年5月には主塔基礎工事が完了。9月には2基のタワーが海上に現れて、完成が間近に感じられるようになった。
開通が目前に迫ってくると、室蘭再生へのシンボルと位置付けて、スワンフェスタ実行委員会に参画。商議所内に白鳥大橋完成記念事業特別委員会を設置した。完成記念イベントの一環として、技術や製品を紹介する室蘭産業フェアを企画。PR用名刺作成や臨港道路へのアジサイ植樹などを展開した。
98年6月13日に供用開始となった。白鳥大橋ウオークや姉妹都市の観光物産展などが行われた。室蘭産業フェアには、2日間で延べ1万2千人超が訪れた。岩倉会頭も「待望の白鳥大橋が完成して、新しい室蘭の幕開けだ」と語るように、市民の悲願達成に喜びもひとしおだった。
構想から40年越しとなった20世紀最大のプロジェクト。市民生活のみならず、現在ではインフラツーリズムの拠点となるなど、観光に欠かせない重要なツールとして、今なお輝き続けている。
(文中の肩書は当時)