原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場を巡り、原子力発電環境整備機構の山口彰理事長(左)から文献調査の報告書を受け取る鈴木直道知事=22日午後、道庁
原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は22日、道内の2町村で実施した全国初の文献調査の報告書を鈴木直道知事らに提出した。両町村で次の概要調査に進めるとした。開始から4年で新たな局面を迎えたが、鈴木知事は同日、機構に「反対は変わらない」と伝えた。次段階は知事の同意が必要で実現まで難航しそうだ。
文献調査は3段階ある最終処分場選定の第1段階で、2020年11月に寿都町と神恵内村で始まった。報告書は寿都の全域と神恵内の南端の一部、両町村の沿岸海底を概要調査候補地とした。知事が翻意しなければ両町村は選定プロセスから外れる。全国で他に文献調査に応じたのは佐賀県玄海町だけだ。
政府は原発の「最大限活用」を掲げる。再稼働が進んだ結果、使用済み核燃料は増え続けている。再利用するための再処理の過程でできる核のごみの処分場は、建設の道筋が今も見えていない。
機構は来年2月19日まで報告書の縦覧を実施。道内外で説明会を開く。3月5日まで住民らの意見を受け付け、概要調査の実施計画を申請。経済産業相の承認後、概要調査に移る。武藤容治経産相はこの日の閣議後記者会見で「地域の意見に反して前に進めることはない」と発言。知事らへの意見聴取の時期については「回答を控えたい」とした。
報告書を受け取った鈴木知事は道庁で機構の山口彰理事長に「国民的議論が深まっていない」などとして概要調査に反対すると伝えた。寿都町の片岡春雄町長は「議論の輪が全国に広がることに期待している」とコメント。神恵内村の青塚芳朝副村長は「内容を確認し、理解した上で対応を検討する」と述べた。
文献調査では、延べ1800件以上の火山や活断層などに関する資料を分析し、概要調査に明らかに適さない場所を除外した。概要調査を受け入れると自治体には最大70億円の交付金が出る。
◆―― 鈴木知事、反対揺るがず 「次進めない」難航予想も
鈴木直道知事は22日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向け、寿都町と神恵内村が第2段階の「概要調査」に進めるとの報告書を受け取り、改めて概要調査への反対を表明した。調査に手を挙げた両町村は住民投票などで民意を問う構えだが、担当者からは「知事が反対を貫けば次には進めない」との声が漏れた。
政府は首長が反対のままでは調査を進めることはできず、両町村は選定プロセスから外れる。事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は報告書の縦覧を行いつつ、両町村や札幌市などで説明会を開いて理解促進を狙うが、知事の翻意につながるかどうかは見通せない。
鈴木知事は核のごみの持ち込みを拒む「核抜き条例」などを理由に、一貫して調査に反対。既に幌延町に地層処分技術の研究施設があり、国の原子力政策に一定の貢献をしているとの考えに加え、最終処分の議論が北海道だけの問題として進むことへの懸念もある。22日、機構の山口彰理事長と面会し「国民的な議論が必要だが、調査地点に広がりが見られない」と厳しく指摘した。
「今後も理解を深める取り組みを進める」。2020年に文献調査に応募した寿都町の片岡春雄町長は、報告書受領後に出したコメントで、概要調査の是非には言及しなかった。町は住民投票で賛否を問う方針だが、実施は来年10月に見込まれる町長選の後になるとの見方も。片岡氏が世論が割れて再選が危うくなる事態を避けるとの観測が背景にある。
神恵内村の高橋昌幸村長は受領に立ち会わず「次のステージに進むか否かの判断については、村民の意見を十分に踏まえて慎重に対応したい」とのコメントを発表した。