営業運転開始から50年となった関西電力高浜原発1号機(中央)=14日午前、福井県高浜町(共同通信社ヘリから)
◆―― 新増設望む声も
国内で稼働する中で最も古い関西電力高浜原発1号機(福井県高浜町)は14日、営業運転開始から50年となった。長期運転による安全性への懸念や、原発構内にたまる使用済み核燃料の行き先、事故時の避難計画の実効性など課題は山積する。地元からは、将来も原発関連収入を期待して新増設を望む声が上がる一方、他の産業育成の必要性を指摘する人もいる。
町議会で原発誘致が決議されたのは1966年。県内初の財政再建団体に指定され、新たな産業を模索していた。74年に1号機が運転を開始。町内でガソリンスタンドを経営する田中康隆さん(68)は「原発は市民権を得てきた」と振り返る。
1号機は定期検査入りした2011年1月に停止し、23年7月に再稼働した。来年6月には60年を超える運転を可能とする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が全面施行され、1号機が国内初の60年超運転となる可能性もある。なし崩し的な運転延長や老朽化リスクへの不安は消えない。
使用済み燃料の搬出先となる青森県六ケ所村の再処理工場の完成目標は延期が繰り返され、高浜原発の燃料プールの貯蔵率は今年9月末時点で87%と逼迫。関電は構内に燃料を一時保管する乾式貯蔵施設の設置を計画する他、中国電力と共同で山口県上関町に中間貯蔵施設を建設する計画を進めるが実現は見通せず、県外搬出のめどは立っていない。
高浜原発30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)には福井県に加え、京都府や滋賀県の自治体も入る。能登半島地震では道路が寸断されるなど避難計画の実効性が問われた。元町幹部は「高浜は南北を海と山に挟まれ、東西を移動できるのは山あいの高速道路と海沿いの国道の2本だけ。心もとない」と打ち明ける。
2号機は14日で運転開始49年に、3、4号機は来年、40年になる。全国最多の4基が再稼働を果たした町では、本年度の一般会計当初予算119億円のうち6割が原発関連収入だ。「新増設などを早急に検討すべきだ」と田中さん。別の60代男性は「原発は1基建てたらもう1基欲しくなる。他の産業を真面目に考えなかったつけを次世代が払わされる時が来る」と漏らした。
【高浜原発1号機】福井県高浜町にある関西電力の加圧水型軽水炉で、出力は82・6万キロワット。1974年11月14日に営業運転を開始した。廃炉になった原発を除くと、国内では最も古い。2011年1月に定期検査入りして以降停止していた。東京電力福島第1原発事故後にできた運転期間を「原則40年、最長60年」とするルールの下で、16年に40年超運転が認められ、23年に再稼働した。