室蘭商工協会時代の議員選挙
◆―― 産業振興に推進力増す 初代会頭に小林繁弥氏
室蘭鉄道の開設に端を発して、室蘭は今につながる基幹産業である製鋼、製鉄をはじめ、漁業や交通など幅広い業界で飛躍的な発展を遂げていた。鉄道や海陸連絡施設の整備などが図られた。室蘭は本州との交通の要所と目されるようになり、北海道庁は1898年に室蘭港調査委員会を設置、港の修繕、改築調査に着手した。
調査委員会は、室蘭商工会の要望を契機に実現した。室蘭の経済が次第に力を増していった表れで、町制施行の1900年には、商工業者でつくる室蘭経済会が発足。実業家組織として実績を積み重ねて、06年設立の室蘭実業会に併合された。
室蘭実業会は、室蘭商工会議所の前身となる室蘭商業会議所の母体ともいえる組織。このほか、室蘭商工同志会をはじめ、複数の団体が明治から大正にかけて相次ぎ発足。2代目や若手経営者による室蘭実業青年会も結成されて、産業振興の推進力は深みを増していた。
道内では函館や小樽、旭川で商工会議所が発足。区制施行の釧路でも機運が増しており、室蘭でも設立を目指す動きは強まっていった。
室蘭実業会などが念入りに準備を進めて、楢崎平太郎(楢崎商店社長)ら35人が発起人となり、1919年12月4日、農商務大臣山本達雄へ室蘭商業会議所設立発起認可申請書を提出した。室蘭実業会の小林繁弥会長も上京したほか、北海道商業会議所連合会も活動を後押しした。
設立運動には経済調査会も加わり、実業会、実業青年会3者による連携強化を図った。22年、室蘭区の市制施行により室蘭市が正式に誕生。市内全域での商業会議所設立の動きが生まれた。
23年6月、3者が統合して商業会議所の代行機関としての室蘭商工協会創立委員会が発足した。同年8月、室蘭商工協会の第1回総会を開催。小林繁弥会頭のほか、副会頭、常議員らが選出された。23年9月、稟(りん)請書を農商務大臣高橋是清に提出。設立発起の認可を強く要請した。
10月15日に会議を開いて定款を可決。同25日、楢崎平太郎ら34人の連名で設立認可申請書を提出。11月6日付で待望の認可を得ることとなった。現在につながる室蘭商業会議所が正式に発足した瞬間だった。
(第1部おわり)