イスラム組織ハマスの拘束から解放された人質(中央)=19日、パレスチナ自治区ガザ(ハマス軍事部門提供・ロイター=共同)
◆―― イスラエルも90人釈放 第1段階、身柄交換を継続
【エルサレム共同】イスラム組織ハマスは19日、パレスチナ自治区ガザでの停戦発効を受け、拘束していた人質女性3人を解放し、国際赤十字を通じてイスラエル側に引き渡した。ロイター通信によると、イスラエル当局は20日、見返りとして拘束下のパレスチナ人90人を釈放した。第1段階の停戦期間中、双方は段階的に身柄交換を続けるとしており、合意を着実に履行できるかどうかが焦点だ。
ハマスが人質を解放したのは、2023年11月~12月の戦闘休止以来。今回解放された女性3人は20~30代で、いずれも23年10月のハマスによる奇襲攻撃で拉致された後、ガザで拘束されていた。3人は治療を受けるためイスラエル中部テルアビブ近郊の病院に搬送されたが、健康状態は良好という。
ロイターによると、釈放されたパレスチナ人を乗せたバスがヨルダン川西岸ラマラに到着すると、人々は花火を打ち上げて祝福した。90人のうち69人が女性で、未成年者も含まれるという。
ハマス軍事部門「カッサム旅団」報道官は停戦発効を受け、合意を順守すると宣言。イスラエル軍に対し、合意違反があれば、人質の命が危険にさらされると警告した。
共同通信が入手した合意文書によると、ハマスは第1段階の6週間で人質計33人を段階的に解放する。7日目に4人を解放、その後毎週3人ずつ、6週目に残りの人質を解放する。一方、地元メディアによると、イスラエル側は見返りとして、拘束しているパレスチナ人、約1900人を釈放する可能性がある。
ガザ保健当局によると、戦闘開始以降のガザ側死者は4万6900人以上。ハマス拘束下の人質は約100人とされるが、既に死亡した人も多いとされる。
◆―― 「このまま全人質解放を」 待望の帰還、速報に大歓声
【テルアビブ共同】「人質解放」の速報が流れると観衆からは大歓声が上がった。パレスチナ自治区ガザの停戦初日となった19日、イスラム組織ハマス拘束下の女性人質3人が解放され、家族と再会を果たした。「このまま最後の1人まで解放が続いて」。イスラエル中部テルアビブの広場には数千人が集まり、待望の瞬間を見守った。
一方、20日未明にはイスラエルが拘束するパレスチナ人90人がヨルダン川西岸ラマラ郊外の刑務所から解放された。90人を乗せたバスの周辺には多くのパレスチナ住民が集まり、ハマスの旗を振って解放を祝福。「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と歓声を上げ、花火も打ち上げられた。
中東メディアによると、北部ガザ市内でハマスから国際赤十字に3人が引き渡されたのは夕方。引き渡し場所は多くのガザ住民でごった返し、大混乱した。ガザ住民からはハマス戦闘員をたたえるシュプレヒコールも上がった。
3人は国際赤十字の車両でガザ境界まで移動。いずれも自力で歩行が可能で、イスラエル政府は病院で3人が家族らと抱擁する映像を公開した。3人のうちの1人、ドロン・シュタインブレヘルさん(31)の家族は「愛するドロンは帰ってきた。私たちは全人質が帰ってくるまで力を尽くす」とのコメントを出した。
テルアビブの広場には大型スクリーンが設置され、ニュースを中継。広場を訪れた女性シラ・シュイナンゾーンさん(33)は「長くつらい日々の終わりが、やっと見え始めた。順調に解放が進んでほしい」と話した。