システムの不具合を伝える日航の電光掲示板=26日午前、羽田空港
◆―― 販売停止、影響拡大も
日航は26日、午前7時25分ごろから、社内外をつなぐネットワーク機器にサイバー攻撃があり、乗客が手荷物を預ける際に使用するシステムなどに不具合が起きたと発表した。少なくとも国内線14便で、最大約1時間の遅れが出た。国際線にも遅延が出ており、今後、影響が拡大する可能性があるとしている。
日航によると、26日出発の新たな航空券の販売を停止した。既に予約されている航空券は、そのまま利用できる。
捜査関係者によると、警視庁は日航から被害相談を受け、詳しい状況を確認している。
日航は、サイバー攻撃した者の特定や対応を検討すると表明。攻撃の標的となっている疑いが濃厚なルーターについて、一時的に遮断することに成功したという。「影響範囲を特定できており、復旧を急いでいる。ご迷惑をおかけしていることを深くおわびする」としている。
他の国内航空会社で、全日空、スカイマーク、ソラシドエア、スターフライヤーはいずれもサイバー攻撃は確認されておらず、運航に影響は出ていないとしている。
羽田空港から沖縄・石垣島に向かうという会社員の30代男性は「無事にチェックインはできた。楽しみにしていた年末の旅行なのに、こうしたトラブルがあると不安だ」と話した。
【サイバー攻撃】企業や政府機関の情報通信システムに不正侵入し、機密情報を盗み出したり、データを破壊したりする行為。コンピューターウイルスを仕込んだメールを送り付け、パソコンを感染させて乗っ取る手口が多いとされる。大規模な攻撃には国家の関与が疑われる例もある。国民生活に欠かせない重要インフラが停止する被害も拡大している。
◆―― サイバー被害、拡大続く 日本企業や施設狙い
日航へのサイバー攻撃で国内線や国際線に遅延が出た。日本の企業や施設を狙った攻撃の被害は拡大が続いている。今年3月には光学機器メーカーのHOYAが身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」により攻撃され、システム障害が発生。レンズの納期が遅れ、眼鏡チェーン店などで一部の眼鏡の販売停止に追い込まれた。
5月には情報処理サービスのイセトー(京都市)が被害を受け、業務を委託していた自治体や金融機関などの取引先のデータが大量に流出した。6月には出版大手KADOKAWAが攻撃され、関係者約25万人分の個人情報が流出したほか、動画配信サービスの停止や書籍の流通遅れなどの影響が出た。
大規模なインフラ施設を巡っては2023年に名古屋港のコンテナターミナルがランサムウエアによって停止。コンテナの搬出入作業が一時、ストップした。
国内空港へのサイバー攻撃では、15、16年に成田空港と中部空港のサイトが国際的ハッカー集団「アノニマス」に狙われ、大量のアクセスが集中して閲覧できなくなる障害を引き起こされた。