同性婚を巡る東京第1次訴訟の控訴審判決を受け「高裁でも違憲」などと書かれた横断幕を掲げる原告ら=30日午前、東京高裁前
◆―― 立法不作為否定、請求棄却 カップルら7人原告
同性婚を認めない民法などの規定は憲法に違反するとして、同性カップルら7人が国に1人当たり100万円の損害賠償を求めた東京第1次訴訟の控訴審判決で、東京高裁(谷口園恵裁判長)は30日、規定を「違憲」と判断した。「合理的な根拠に基づかず、性的指向により法的な差別的取り扱いをしている」とし、「法の下の平等」を定めた憲法14条1項と「個人の尊厳と両性の本質的平等」を掲げた24条2項に違反すると指摘した。
請求については、最高裁の統一判断がなく、国会の立法不作為による賠償責任は認められないとして、棄却した一審判決を支持し、原告側の控訴を退けた。
全国5地裁に起こされた計6件の同種訴訟のうち、「違憲」と判断したのは4件目で、高裁判決では今年3月の札幌に続いて2件目。いずれも賠償請求は退けていた。
谷口裁判長は判決で「婚姻制度で異性間と同性間を区別することに合理的根拠があるとはいえない」と述べた。
東京第1次訴訟で2022年11月の一審東京地裁判決は、同性愛者がパートナーと家族になるための法制度がない現状について、「個人の尊厳と両性の本質的平等」を掲げた憲法24条2項に反する違憲状態と指摘。一方で、どのような制度にするかは国会の裁量に委ねられるとし、請求を棄却した。原告側が不服として控訴していた。
今年3月の札幌高裁判決は、憲法24条2項のほか、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立するとする憲法24条1項に関して「同性間の婚姻も保障していると理解できる」との初判断を示し、違憲とした。法の下の平等を定めた憲法14条にも反するとした。
【同性婚】戸籍上の男性同士または女性同士の結婚。憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」すると規定する。「両性」という言葉は異性婚を想定しているとされる一方で、「憲法制定時は異性婚のみが念頭にあったが、同性婚を積極的に禁止する趣旨ではない」とする学者や弁護士もいる。法律婚をできない不利益として、パートナーの法定相続人になれないことや、緊急手術の同意書に署名ができないことなどが挙げられる。全国の自治体では同性カップルを公的に認めるパートナーシップ制度が随時導入されているが、法的な拘束力はない。
◆―― 「今日を迎えられ幸せ」 違憲判断、満面の笑み
満面の笑みを浮かべた原告を、大きな歓声と拍手が包んだ。同性婚を巡る訴訟で30日、「違憲」の判断を示した東京高裁判決。閉廷後、原告5人は支援者を前に笑顔を見せ「今日を迎えられて幸せ」「本当にうれしかった」と口々に語った。
法廷内で判決を見届けた原告の東京都世田谷区の小野春さん=仮名、50代=は、口元を手で押さえながら聞き入った。裁判長の言葉に何度も深くうなずき、ハンカチに顔をうずめた。
閉廷後は「婚姻の平等へさらに前進!」と書かれた横断幕を5人で掲げ、支援者からは「おめでとう」「ありがとう」と声が上がった。
60代の大江千束さんは「裁判長の言葉がどんどん頭に入って来て、主張をしっかりくみ取ってくれている実感が湧いた。今日を迎えられて幸せ」と語った。
パートナーと共に判決に臨んだ沖縄県の50代の広橋正さんは、5年以上に及ぶ訴訟の中で亡くなった原告がいたことに触れ「一緒に喜んでくれていると思う。良い判決だった」と話した。