衆院本会議で第102代首相に指名された自民党の石破茂総裁=1日午後2時14分
◆―― 衆院選へ与野党臨戦態勢 裏金、物価高対応争点
自民党の石破茂総裁(67)は1日午後、衆院本会議の首相指名選挙で第102代首相に選出された。約3年で退陣する岸田文雄首相(67)から政権を引き継ぐ。石破氏は直ちに組閣に着手。皇居での首相任命式と閣僚認証式を経て、夜に石破内閣を発足させる。衆院を9日に解散し、衆院選を15日公示、27日投開票の日程で実施する意向だ。与野党は臨戦態勢に入り、派閥裏金事件を受けた対応や物価高対策を含む経済政策が争点となる。
衆院本会議での首相指名選挙は投票総数461票で、石破氏291票、立憲民主党の野田佳彦代表100票、日本維新の会の馬場伸幸代表45票、共産党の田村智子委員長10票、国民民主党の玉木雄一郎代表7票、無所属の吉良州司氏5票、れいわ新選組の山本太郎代表3票だった。
石破氏は9月30日の記者会見で「新政権はできる限り早期に国民の審判を受けることが重要だ」と述べ、国会論戦を限定した衆院選日程を表明した。野党は「国会軽視だ」と批判している。
与党は4日に衆参両院で所信表明演説、7日から各党代表質問を行う日程を想定する。石破氏は演説で裏金事件を踏まえた信頼回復や物価上昇を上回る賃上げ実現を訴え、立憲民主党の野田代表(67)は代表質問で「政治とカネ」問題を厳しく追及する構えだ。
新内閣では総裁選で争った岸田内閣の林芳正官房長官(63)を再任させ、財務相に加藤勝信元官房長官(68)を充てる。
鳥取県出身の首相は初。石破氏は1986年に初当選し衆院当選12回。
岸田内閣は1日午前の閣議で総辞職した。岸田首相の在職日数は1094日で、戦後8番目の長さだった。
石破茂氏(いしば・しげる) 慶大卒。銀行員を経て86年に衆院初当選。93年に自民を離党し97年に復党。防衛相、農相、党幹事長などを歴任した。5度目の挑戦となった9月の党総裁選で総裁に選出された。67歳。鳥取1区、当選12回。
【首相指名選挙】内閣が総辞職した場合や首相が欠けた際、国会議員が議員の中から次の首相を決める選挙。憲法67条の規定に基づく。衆参両院の本会議で「記名投票」を実施し、過半数の票を得た議員が天皇による任命式を経て正式に新首相に就任する。得票が過半数に達しなければ、上位2人の決選投票で決める。衆参の指名が異なり、両院協議会でも意見が一致しない場合、衆院の議決を優先する。現行憲法下の首相は全員が衆院議員で、参院議員が指名された例はない。