自民党の新総裁に選出された石破茂氏=27日午後3時23分、東京・永田町の党本部
◆―― 早期衆院選の観測
自民党総裁選は27日、党本部で投開票され、石破茂元幹事長(67)が第28代総裁に選出された。1回目の投票で過半数に達した候補者はなく、上位2人による決選投票の結果、石破氏が高市早苗経済安全保障担当相(63)を破った。10月1日召集の臨時国会で、岸田文雄首相の後継となる第102代首相に指名される。早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰されており、石破氏の判断に注目が集まる。
決選投票の結果は、石破氏215票、高市氏194票で21票差だった。内訳は石破氏が議員票189、地方票26だったのに対し、高市氏が議員票173、地方票21だった。
任期は2027年9月までの3年間。石破氏は党役員人事に着手し、新執行部を発足させる。
総裁選は岸田氏の総裁任期満了に伴うもので、派閥裏金事件に端を発する派閥解消の流れを受け、過去最多9人の争いとなった。石破、高市両氏のほか、小林鷹之前経済安保相(49)、林芳正官房長官(63)、小泉進次郎元環境相(43)、上川陽子外相(71)、加藤勝信元官房長官(68)、河野太郎デジタル相(61)、茂木敏充幹事長(68)が立候補した。
衆院選を巡り、与党内には、首相の所信表明演説と衆参両院の代表質問の直後に解散すべきだとの声が根強い。10月27日や11月10日投開票の見方がある。石破氏は「なるべく早期に信を問うのは当然だ」と述べていた。
5度目の挑戦で「最後の戦い」と位置付けた。首相在任中の憲法改正に向けた国会発議や防災省創設を掲げた。
石破茂氏(いしば・しげる) 慶大卒。銀行員を経て86年に衆院初当選。93年に自民を離党し97年に復党した。防衛相、農相、党政調会長、幹事長、地方創生担当相を歴任。安全保障と地域活性化がライフワーク。67歳。鳥取1区、当選12回。
【自民党総裁】自民党の党首。衆院で過半数の議席を占めている現状では、衆参両院の首相指名選挙を経て首相となる。保守合同による1955年の結党時には置かれず、翌56年に総裁選を実施し当時の鳩山一郎首相が初代に就いた。細川、羽田、村山各政権時代の河野洋平氏と、民主党政権時代の谷垣禎一氏は首相に就かなかった。岸田文雄首相は第27代で、新総裁は第28代。任期は3年。2017年に「連続2期まで」だった党則を改正し「連続3期まで」の在任が可能となった。
◆―― 5度目挑戦で勝利
「政治生活の総決算」と臨んだ5度目の自民党総裁選挑戦でようやく勝利を手にした。世論調査での人気や高い発信力を背景にして応援演説などで全国を回り、地道に党員の支持を広げる戦略が奏功した形だ。
父は鳥取県知事や自治相を務めた二朗氏。銀行勤務を経て、父と親しかった田中角栄元首相の勧めで政界入りを志し、1986年衆院選で初当選した。田中氏を「政治の師」と仰ぐ。
政治改革を訴え、93年に自民を離党。復党後の2002年に防衛庁長官として初入閣した。12年総裁選では1回目の投票で1位だったが、決選投票で安倍晋三元首相に逆転された。16年の地方創生担当相退任後は要職から遠ざかり、石破派議員が減少。21年に派閥からグループに移行した。
時の政権に苦言を呈し「後ろから鉄砲を撃つ」と評される。「オタク体質」で軍事、鉄道、アイドルに詳しい。妻佳子さんとの初デートで映画「連合艦隊」を観賞した。鳥取県出身。(無派閥)