
北電泊原発3号機について議論する原子力規制委の会合=30日午前、東京都港区
◆―― 北電、27年再稼働目標 審査長期化11年超
原子力規制委員会は30日の定例会合で、北海道電力泊原発3号機の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書」の案を了承した。事実上の審査合格で、11原発18基目。審査は長期化し、2013年7月の申請から11年以上かかった。北電は27年3月ごろまでに防潮堤建設などの安全対策工事を終えた後、再稼働を目指すとしている。
今後、一般からの意見公募や経済産業相への意見照会などを経て、夏ごろにも正式合格となる見通し。再稼働には地元同意や、規制委による設備の詳細設計や運用ルールの認可が必要となる。
泊3号機は09年12月に運転を始めた国内最新の原発。北電は新規制基準施行当日に審査を申請したが、敷地内の断層が活断層かどうかなどの議論で長期化した。1、2号機の審査は継続中。
会合で山中伸介委員長は、泊3号機と既に再稼働済みの同型原発では、設備面でほとんど違いがないことを事務局に確認。その上で「長時間かけたのは敷地内断層の審査だと理解している」と述べた。
審査の結果、耐震設計の目安となる基準地震動は、申請当初の最大550ガル(ガルは加速度の単位)から最大693ガルとなった。津波想定は海抜7・3メートルから17・8メートルに引き上げた。14年に16・5メートルの防潮堤を設置したが、規制委が液状化現象で沈下する恐れを指摘し、19メートルに造り直している。周辺の火山の噴火で厚さ40センチの火山灰が降り積もる事態を想定する。
電源車や注水ポンプ、緊急時対策所などを含めた3号機の安全対策工事の費用は約5150億円となった。申請時点では1~3号機で900億円超を見込んでいた。
【泊原発】泊村に立地する北電の原発。1号機(57万9千キロワット)は1989年6月、2号機(57万9千キロワット)は91年4月、3号機(91万2千キロワット)は2009年12月に運転を始めた。いずれも加圧水型軽水炉。東京電力福島第1原発事故後、順次定期検査に入り、12年5月までに全基が停止した。22年5月、札幌地裁が津波対策の不備などを理由に全基の運転差し止めを命じ、札幌高裁で控訴審が続いている。