
熊本地震の「前震」から9年となり、震災記念公園で黙とうする熊本県益城町の西村博則町長(左)ら=14日午前、益城町
熊本、大分両県で計278人が犠牲となった2016年の熊本地震は14日、最初の激震「前震」から9年となった。前震と16日の「本震」で震度7を2回記録した熊本県益城町では午前8時半ごろ、西村博則町長や職員ら約30人が1分間黙とうした。町長は震災記念公園の献花台に花を手向け「地震を風化させることなく、伝え続けることが大事だ」と語った。
県内の主要なインフラや自治体の庁舎の復旧はほぼ完了している。西村町長は「ハードの復旧はかなり進んだが、心の部分が一番の課題と思う。ソフト面の復旧をしっかり進めたい」と述べた。
熊本県庁では追悼式が開かれ、遺族ら20人が参列。記念碑前で黙とうし、献花した。木村敬知事は式辞で「県民一丸となって創造的復興に向かって歩んできた。防災・減災対策の一層の充実を図り、安心して暮らすことができる熊本を築いていく」と話した。
生後間もない次女陽縁ちゃんを失い、災害関連死と認定された市原耕一さん(50)は「今も大きくなっていたらどんなふうになっていただろうね、と家族で話す」と声を絞り出した。
先天性の心臓病があった次女花梨ちゃん=当時(4)=を災害関連死で亡くした宮崎さくらさん(46)は「娘を失ったつらさ、悲しい気持ちは変わらない。助けられたんじゃないかと今でも思う」と話した。
熊本地震では、県内の災害関連死は220人で、直接死の4倍超に上った。大分県の死者は関連死の3人。両県で計約4万3千棟の住宅が全半壊し、最大時計約19万6千人が避難した。
熊本城(熊本市)は石垣の崩落など大きな被害を受け、復旧工事の完了は52年度になる見通し。
【熊本地震】2016年4月14日午後9時26分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード(M)6・5の「前震」が発生。16日午前1時25分にはM7・3の「本震」があった。熊本県益城町で観測史上初めて震度7を2回記録。建物倒壊などによる直接死は50人で、益城町は県内市町村最多の20人だった。同年6月の豪雨による死者のうち、地震との関連が認められた熊本県の5人を含め、犠牲者は全体で278人に上る。阿蘇地域では阿蘇大橋が崩落し、国道が土砂崩れで寸断されるなど交通網に大きな被害が出た。