韓国の尹錫悦大統領
◆―― 地裁が発付、支持者暴徒化
【ソウル共同】韓国の高官犯罪捜査庁(高捜庁)は19日、「非常戒厳」宣言を巡る内乱首謀容疑で尹錫悦大統領を逮捕した。ソウル西部地裁が同日午前2時50分(日本時間同)ごろ、証拠隠滅の恐れがあるとして逮捕状を発付した。現職大統領の逮捕は初めて。15日からの拘束期間を含めて最長20日間の身柄拘束が可能となり、捜査が本格化する。尹氏の起訴は不可避との見方が強い。
尹氏の一部支持者は逮捕状発付に反発して暴徒化。地裁敷地内に乱入して外壁を破壊したほか、窓ガラスを割って建物内に侵入し、内部を破壊するなどした。韓国メディアによると、警察は建造物侵入の現行犯で45人を拘束した。
高捜庁関係者は、尹氏に対して19日午後2時に取り調べに応じるよう要請したと明らかにした。
地裁は18日に逮捕状審査を開き、尹氏が出席。弁護団によると、尹氏は「韓国の危機的な状況を述べ、非常戒厳の正当性を説明するのに最善を尽くした」という。戒厳令の宣言は統治行為で内乱罪に当たらないと訴えたが、地裁はこうした主張を退けた。
尹氏は違憲・違法な戒厳令により、国会議員の戒厳解除要求決議を防ぐため国会封鎖を試みた疑いや、与野党代表ら主要政治家を拘束しようとした疑いなどが持たれている。国会に兵力を投入した軍幹部らが「尹氏から直接指示された」と供述しているとされ、捜査当局は立証可能と判断しているもようだ。
尹氏は高捜庁の3度にわたる出頭要請に応じず、拘束も大統領警護庁を動員して1度は阻止した。15日の拘束後も黙秘や取り調べ拒否などの徹底抗戦を続けている。
昨年12月3日夜、尹氏は野党が国政や司法をまひさせているとして戒厳令を宣言した。戒厳司令部は政治活動の禁止や言論統制などを布告し、軍が国会に突入した。
国会は12月14日、尹氏の弾劾訴追案を可決。尹氏は職務停止となり、罷免の是非を決める憲法裁判所での弾劾審判が始まっている。
【韓国の拘束と逮捕】韓国の刑事訴訟法によると、捜査機関は罪を犯した疑いのある容疑者が逮捕前の任意の出頭要請に応じなかった場合などに、48時間身柄を「拘束」することができる。拘束後は48時間以内に逮捕状を請求する必要があり、請求しなければ釈放となる。逮捕状の発付を受けて「逮捕」した場合、最長20日間身柄を拘束できる。「拘束」は緊急の場合は令状なしでもできるが、「逮捕」には令状が必要。裁判所は逮捕状発付の是非を判断する際、容疑者本人を審問する。一般的に逮捕された場合、拘束時より容疑がより強まったと見なされる。(共同)