取材に応じる北斗文化学園が運営する専門学校の沢田乃基校長=2024年11月、室蘭市
介護業界の人手不足を解消しようと、室蘭市の学校法人「北斗文化学園」は20日から、ミャンマーで日本の介護の基礎を学べる講座を開設する。同国で介護人材を育成して日本に来てもらう試みで「地域の介護現場を支えることができれば」と意気込む。学園によると、海外での育成の取り組みは全国初。
開設するのは排せつや入浴など体に触れる介護に必要な「介護職員初任者研修」の講座。研修生は合同会社machito(マチト、千歳市)が最大都市ヤンゴンで運営する日本語学校で約1カ月の出前講座を受け、「特定技能1号」の在留資格で日本に入国。室蘭で約1カ月学んで残りの研修を修了し、主に道内で働く流れだ。
マチトが募る雇用元の企業が受講費や渡航費を全額負担。研修生がこれらの企業で継続就労すれば返済が免除される。
海外からの介護人材受け入れルートは経済連携協定(EPA)や在留資格「介護」などがあるが、いずれも入国後に介護施設で働きながら資格取得や技術習得を目指す仕組み。
今回の試みでは、働き手が有資格者としてより良い待遇を受けられ、事業者側も受け取る介護報酬額が上がる。基礎を学んでから入国するため、実際の仕事とのミスマッチも減らせるという。
日本は介護の先進地で、学園は要介護者の自立した生活を支援する「自立支援介護」を教える。ミャンマーの名誉領事も務める沢田乃基校長(55)は、学んだ技術をいずれは母国でも役立ててほしいと話し「要介護者と働き手、事業者いずれにとっても良い形を目指す」と強調する。
厚生労働省は2024年度から外国人材に対する研修の実態把握を始めたばかり。神奈川県立保健福祉大の臼井正樹名誉教授(介護福祉)は「海外は目が届きにくく行政の指導も難しいので、慎重に進めてほしい」と求めつつ、適正な運用が実現すれば両国にとってプラスになると期待を示した。