12日、パラオ・コロール州の執務室で単独会見に応じるウィップス大統領(共同)
◆―― 大統領「領空通過で脅威」
【コロール(パラオ)共同】太平洋島しょ国パラオの大統領選で再選されたスランゲル・ウィップス大統領(56)が12日、コロール州で共同通信と単独会見した。中国が9月25日に太平洋に向けて発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)が領空を通過し「直接の脅威」を受けたと強調。これに対処するため米国に防空システム「パトリオット」配備を要請する意向を表明した。
太平洋で米中対立により緊張が高まっている状況が鮮明になった。米軍はグアムを軸に海兵隊を分散・機動展開できる体制に移行中で、パラオを戦略的に重視している。
パラオは軍を持たず、米国との「自由連合協定」に基づき防衛を米軍に委ね、領域の軍事利用を認めている。ウィップス氏は、中国がICBMの領空通過をパラオに事前通知しなかったと批判。パラオが脅威にさらされていると米国が判断すれば、パトリオットが配備されるとの見方を示した。
また、米軍が国内2カ所にレーダー新設を準備中だとし、警戒監視能力は防衛上、重要だと指摘。「日本や台湾、フィリピン、韓国は米国と協力している。私たちも抑止力として米軍が必要だ」と語った。
米大統領選で当選したトランプ氏については、同氏が1期目にパラオでレーダー新設計画に着手し、太平洋の重要性にも着目したとして安全保障面の協力に期待。一方、太平洋諸国にとって切実な気候変動問題では「全く意見が一致しない」と懸念、パリ協定から離脱せず「少なくとも耳を傾けて議論に加わるよう望む」と訴えた。
中国の外交攻勢の結果、台湾と外交関係を保つ国がパラオを含む12カ国に減ったことにも触れ、台湾を一層擁護していく決意を表明。「台湾は80年近く、自ら統治し、地域の平和が続いている」とし、現状維持を呼びかけた。