ストレッチャーに乗せた患者を船内に搬送する医療従事者
内閣官房主催の「災害時における船舶を活用した医療体制の強化にかかる実動訓練」が、室蘭市入江町の室蘭港フェリーターミナルに停泊中の津軽海峡フェリー「ブルーマーメイド」(8820トン)で行われた。参加者は大規模災害時の海上からの医療アプローチについて実践を通し検証した。
訓練には、災害派遣医療チーム「DMAT」などに所属する約30人の医療従事者が参加した。フェリーに救急車が乗り入れる流れなどを確認し、結果を踏まえて政府は本年度内に出動や活動の手順をまとめる。
訓練は、釧路沖を震源とするマグニチュード9・1の地震(千島海溝地震)が発生。同市の病院の患者を青森県の港まで輸送する想定で行われた。船内では、医療従事者らが患者の状態に合わせて処置。感染症の疑いがある患者は、隔離テントで処置を行うなどした。ミーティングでドクターヘリや救急車など搬送方法も決めた。
内閣官房船舶活用医療推進室の藤原俊之参事官は「課題解決に向け、専門家の意見を取り入れつつ改善していきたい」と話した。統括医師役を担当した平成立石病院(東京)の大桃丈知院長は「食事など医療でできない部分も改善が必要」と説明。一方で「コロナ禍では医療とは関係ない場所で処置を行っていた。その延長として客船は有効ではないか」と期待した。
政府は来年度から医療機材や病床を備えた「病院船」の運用に乗り出す。実動訓練は、船舶を活用した医療提携の仕組みづくりに向け、実演を通して検証や課題の抽出を行った。